テレワークが進んだ街はどこ?

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前回に引き続き、緊急事態宣言下の外出自粛が、日本各地の人の動きにどんな影響を及ぼしたのかを、あさひる統計の最新バージョンで振り返ってみます。

前回は各地のビジネス街の人流の変化をマップに表して概観してきました。

今回は、まずマップ上でエリアを絞って数値を集計して量的に把握することを試みます。

その上で、125m単位という狭い単位での人口を集計できるというあさひる統計の特長を生かして、どの街で一番人口が減ったのか、すなわちテレワークが最も進んだと思われる場所はどこなのかという疑問に答えていきたいと思います。

いったいどのくらいの人口が外出自粛を行ったのか?

山手線がすっぽり含まれる円領域内で集計した数値を、2020年4-6月期と前年同期間で比較してみました。

あさひる統計の深夜帯の人口を集計すると、このエリアに住んでいる人口は280万人あまりと推計できます。2019年の4-6月期の平日昼間の人口がピークになる時間帯には、このエリアに800万人近くの人口が滞在していたことがわかります。したがって、隣接する首都圏各地から通勤などで流入する人口は520万人程度あったことが推測できます。

一方、コロナ禍に襲われた2020年の同時期では、滞在人口は550万人まで減っています。したがって流入人口は270万人。流入人口は半減し、減少幅は250万人近くに達していたことが分かります。

これでは都市機能は完全に崩壊です。

 

オフィス街では平日昼間の人口は半分程度に

通勤などによる流入人口が半減したわけですから、都心のオフィス街の滞在人口もほぼ半減しました。

サンプル的に、東京駅から徒歩圏の大手町・丸の内・八重洲地区を選び、ピーク時の人口を集計してみました。このエリアはほぼ人は住んでおらず、典型的なオフィス街といえます。

人口を時間帯別に集計してみると、全時間帯で人口が減少していることが分かります。昼間の時間帯は平日休日にかかわらず、前年の半分以下になってしまうほどの激しい減少が見られました。

この時期の東京駅や丸の内といえば、昼間でも行き交う人がほとんど見られず、驚愕の風景だったわけです。実際の数字でどれほどの人出が減っていたのかを実証することができました。

なお、休日の人口動向は後述しますが、この地区では休日の減少率は平日を上回っています。

「不要不急」というキーワードで考えれば、テレワークによる通勤回避による滞在人口の減少率より、休日のお買い物などを目的とした外出自粛がもたらした減少率がより高かったという点は納得できるものと思います。

 

一番「密」なのはどこ?

あさひる統計では、日本全国を125m四方に分割した単位(6次メッシュ)で人口を集計しています。平日昼間の時間帯で一番人口が多いメッシュはいったいどこにあるのでしょうか。一番人口密度が高い「人がぎっしり詰まっている場所」です。

コロナ前の2020年1-3月期では、トップの地点は東京都港区の溜池交差点近くの赤坂インターシティAIR付近のメッシュがトップでした。このメッシュは1年以上トップの地位を守ってきた場所でした。平面にこれらの人を詰め込むと、1平米あたり1名がいたという計算になります。実際にはまだ新しい高層ビルですから、複数の階に人が分散していたわけですが。

2位は東京都中央区晴海にある晴海アイランドトリトン付近のメッシュでした。そして、3位は大阪キタの阪急梅田駅のオフィスビルでした。

数値を見てみると、すでに2020年の1-3月期にはオフィスへの通勤が減りつつあったことが見て取れますが、本格的に数字に表れたのは4-6月期に入ってからです。

この時期、東京都千代田区大手町の読売新聞本社ビル付近のメッシュがトップに躍り出ます。前の時期は4位だった場所です。上位のメッシュが外出自粛の影響を受けて人口を大幅に減らす中、なぜかこのメッシュはほとんど人出を減らさなかった結果です。

2位は前期と変わらず晴海アイランドトリトン付近。ここは35%近く減ったにもかかわらず2位をキープ。前期トップの赤坂インターシティ付近は45%近く減って4位に後退しました。上位の地点を見てみると、一部を除いて半分近くまで大きく減少していることが分かります。

 

減少率が高い地点はテレワーク率が高い?

このようにコロナ禍においては、昼間の「密」を作っていたオフィスビルでは、全体に密度が下がる傾向が見られます。

ただし、その減少幅は一様ではなくバラツキがあります。

赤坂から霞ヶ関にかけての地区で、コロナ前後の平日昼間人口の変化を検証してみましょう。

赤系が濃い場所が前年同期間比で減少率が高い場所、青系が濃い場所が増加率が高いところを示します。この付近はビジネス街ですから、おおむね赤系の人口が減少しているエリアになります。

ごくまれに、前年同期間比で人口が増加しているエリアがあります。

衆議院の議員会館付近が増えています。この時期は国会開催中であり、新型コロナ対策など政治に空白は許されず、テレワークなど難しかったということでしょうか。その反面、参議院の議員会館は減っているというのも不可思議な気がします。

また、赤坂から六本木方面でも人口が増えているエリアがあります。住宅も多く立地している場所です。テレワーク実施により、これらの住宅地では自宅で仕事をする人が増えたことが人口増の要因となったのではないでしょうか。

これ以外のオフィス街は全体的に前年同時期の比較で人口が減っていることがわかります。しかし、その増減幅は一様ではありません。地域ごとの特性をマップから読み取ることができそうです。

新型コロナ対策といえば、厚生労働省の管轄でした。国交省や経産省付近のメッシュに比べて、厚労省付近のメッシュは人口減少率が低くなっていることが分かります。対策に追われてテレワークどころではなかった、ということでしょうか。参考までに、休日昼間人口の前年比もチェックしたところ、前年より人口が増加していることが判明。国家の一大事に休日出勤が増えたというストーリーが想像できます。
厚労省以外では、警視庁や内閣府付近のメッシュで減少幅が小さくなっています。このような比較を通じて、省庁によるこの時期の仕事の特性やテレワークの普及程度の違いを計り知ることができそうな気がします。

一方、霞ヶ関の官公庁エリアに比べ、民間のオフィスビルが立地するエリアでは人口減少率が高くなっていることがわかります。山王パークタワーや赤坂インターシティ、虎ノ門ヒルズ付近では70~80%近くの減少、霞が関ビルでも60%近く前年同時期の人口は減少してます。
官庁街である霞ヶ関はおおむね30~50%程度の減少ですから、官民ではテレワークの普及度がずいぶん違うのかな、ということが推察されます。

 

ビル単位で人口推移を推計できる

もう一歩進めてみます。

ビルの領域を絞りこんで、人口を集計してみました。
集計に際して、ビルの高さを考慮していないので、完全な数字ではないものの、このような手法でビル単位の人口を簡易的に示すことができます。

東京都港区の主なオフィスビルについて、人口を集計してその推移を示したものです。
各オフィスビルでは、2020年4-6月期に一気に人口が減少していることがわかります。特に新しく大規模な収容人数の多そうなオフィスビルの減少幅が大きくなっているようにも見えます。

これだけ大幅な人口の減少は、アフターコロナの時代になっても以前の水準に戻れるのでしょうか。いや、戻る必要があるのか、というような気もします。
不動産業界の皆さまはこの状況に心を痛めていらっしゃることは、容易に想像がつきます。
今後、世界はどう変わっていくのだろうか。僕らはこの世界にアジャストできるんだろうか、と心配が深まるばかりです。

 

以上、平日昼間のオフィス街の人口動向を振り返ってきました。
次のトピックスはコロナ禍により「夜の街がなくなった!」という現象を分析していきたいと思います。

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あさひる統計の詳細は、ホームページをご覧ください。

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