前回「釧路デスクワーク編」もご覧ください
釧路の夏は海から霧が発生して、最高気温が20度位までしか上がらないところだ、と学生の頃聞いた記憶があります。これまで、釧路湿原までは立ち寄ったことがありましたが、そのときは釧路の街は素通りでした。市街地は衰退しているという噂がずっと気になっていて、いずれ行きたいなと思っていました。
4月中旬に札幌での用事があり、いい機会だから道東まで足を伸ばそうと決心しました。まだ桜の開花前の春浅い季節に早足で日本の東端まで足を伸ばしてきた記録です。
日曜日の午後に札幌での用事を済ませ、レンタカーに乗り込んだのが午後4時前でした。高速道路をひたすら東に300kmほど向かい、釧路に着いたのが午後8時過ぎ。
宿に車と荷物を置き、さっそく道東最大の歓楽街に向かいます。宿泊するビジネスホテルが飲み屋街の端っこに位置していて、ホテルの玄関を出たとたん、夜の街の雰囲気が十分感じられます。しかし、歩き始めるとネオンが消えている店が目立ちます。そういえば、今日は日曜日。呼び込みの兄さんも見当たらないし、開店しているお店は3分の1程度でしょうか。それでも、この一円かなりの規模の飲み屋の集積が見られます。せっかくだから金曜日の夜とかに来たかったのですが、まあスケジュールの関係で仕方ありません。
夜の街をぐるっと一回りしてから、日曜日でも開店している居酒屋に立ち寄り晩酌です。20代前半の若者がやっているいい雰囲気の洋風居酒屋です。
店主曰く、釧路の繁華街は末広町って呼ばれていて、昔に比べるとずいぶんお店も減ってしまったそうです。この店はずっと空いてた場所を借りて、1年ほど前から営業を始めたとのこと。街の人口は減り続けているけど、観光や出張の人は相変わらず多くって、飲み屋街は比較的元気ですよって。地元で頑張っている若者からよい話が聞けました。
この夜は、翌日に日本の東端への旅を控えていたので、早めに切り上げ。
翌朝、朝食前に慌ただしく釧路の街を散歩しました。
飲み屋街に隣接するこの場所に、かつては複数のデパートや映画館まで揃う繁華街があったそうです。全国の地方都市の例に漏れず、郊外のロードサイドに商業施設が移転してしまい、2006年を最後にデパートはこの地に存在していません。夜の居酒屋タイムはともかく、それ以外の時間帯の街の賑わいはすっかり失われています。
かつて丸井今井釧路店があったこの場所は、撤退後に新たな商業施設への衣替えを計画していたのですが、これが頓挫して放置状態が続いているそうです。閉まったままのシャッターには落書きがされていて、場末感ハンパない印象を受けます。
さきほどの閉鎖されたデパートの向かいには、新しく分譲されたマンションが建ってます。この場所もかつては釧路繁華街の一翼を担うデパートが存在していました。
商業が去った都心部に住む人が戻ってきて、住宅地化することで人口が増え、また街が活性化するという循環が生まれるのでしょうか。このような流れは、各地の地方都市で見られる現象です。郊外の古い住宅街の家をたたんで、都心のマンションに移転するのは「コンパクトシティ」の実現には前向きな方向とも考えられます。釧路はこの流れが定着するのでしょうか?
都会の繁華街の朝はカラスがゴミをあさる光景が目立ちますが、ここは港町釧路。カモメが屋根で休んでいました。ローカルを感じる瞬間でしたが、地元の人は当たり前の日常風景なんでしょうね。
早朝、誰もいない飲み屋街を抜けて、メインストリートの北大通りを釧路駅に向かいます。
沈む夕陽が有名な弊舞橋から釧路駅方面を望みます。手前のロータリーは国道38号と44号の起点となっており、釧路市の中心でもあります。橋の右手奥のブロックが歓楽街の末広町、隣接してデパートなどが立地する商業中心がありました。橋の左手には観光客がメインの商業施設(フィッシャーマンズワーフ)がありますが、こちらも売り上げ不振が続いているとこのとです。
弊舞橋から釧路駅に向かうのが北大通で、釧路のメインストリートです。
銀行や保険関係、大企業の道東支社と目されるオフィスが目立ち、釧路の業務中心地といっても差し支えないでしょう。
メインストリート沿いはオフィスビルの立地が目立ちます。しかし、一本裏に入ると住宅街っぽい雰囲気もあります。市の中心地はオフィスは多いものの、戸建ての住宅も多く見られ、居住者は比較的多い印象を受けます。地方都市にありがちな人口分布の構造です。
北大通りの突き当たりが釧路駅です。通勤にはちょっと早い時間帯でしたが、閑散としています。通勤でこの駅を使っている人はどの程度いるんだろうかと想像してしまいます。
道内の鉄道は、札幌や千歳空港まで移動する都市間の利用に軸足を置いています。しかし、2016年に釧路近郊の阿寒ICまで高速道路が開通して、バスでも5時間程度で札幌までの移動が可能になりました。特急列車を利用すれば4時間あまりということで、1時間ほどの時間的な優位性はありますが、運賃がバスに比べて3000円ほど高いので、バスとの競争で優位性が保てているかは疑問を感じます。
駅前の案内地図です。地図の上の方向が南です。
駅から南方の釧路川にかかる弊舞橋に向かっているのがメインストリートの北大通。その西側のブロックに市役所や日本銀行、北海道電力やNTT空間情報などの官庁系の施設が立地しています。
再び「あさひる統計」を使って、平日の深夜と昼間の人口の差分をマップ化してみました。黄色の地域は昼間に人口が流入しているところ、グレーは流出しているところです。わかりやすくいうと、このマップの場合の黄色い場所はオフィス街(業務地区)といえます。釧路駅から北大通の西側の官庁街がその中心でしょう。弊舞橋を渡った丘の上にも業務地区が繋がっています。
この際なので、休日の深夜と昼間の人口差分も見てみましょう。休日の午後といえば、仕事お休みの人々はお買い物やレジャーなどのお出かけが中心となる時間帯です。都心部には濃いグレーの場所も目立ち、商業的な機能が失われていることが明らかです。
駅の近くには生鮮食品を取り扱う和商市場があります。まだ営業時間前の時間でしたが、立ち寄ってみました。いろいろな海鮮食材がばら売りされているお店が目立ちます。この市場は、好きな食材を選んで購入して、ご飯にのせて自分流の海鮮丼を作るという「勝手丼」の発祥地だそうです。好きな具を選んで乗せられるので、お得感ありそうですが、ばらばらに乗せていくと結構値が張ってしまうという罠も感じられます。
おばちゃんに「食べてって!」と声かけられたのですが、朝食付きの宿に泊まっていたのでここでの朝食はパスです。ここは完全に観光客向けの施設ですね。
駅前地区のこの周辺には以前は観光向けではない商業施設も立地していたそうです。しかし、この施設は2016年に撤退しています。駅前とはいえ、この周辺は住宅街としての機能もあり住民も比較的多めです。日常のお買い物はどこまで行っているのでしょうか。やっぱり郊外のイオンまでクルマで行くのでしょうかね?
和商市場をあとにして街歩きに復帰します。
NTTや市役所のある官庁街を突っ切り、再び釧路川にぶつかります。プリンスホテルやANAホテルもあって、釧路川の水辺は観光客向けゾーンです。そして、この川辺にフィッシャーマンズワーフがあります。
早朝で営業時間外だったので、残念ながら中には立ち寄れませんでした。夏になると、水辺でビアガーデンが出るっていう看板があって、「また釧路に来なきゃか!?」とちょっと心が動かされました。そんないい場所です。
フィッシャーマンズワーフの前から対岸を眺めると、丘の上に家が建っています。
この風景、どっかで見たことあるなと思いだしていると、横浜の日ノ出町あたりの風景に似てるかな、と。日ノ出町といえば、映画「天国と地獄」を思い出します。きっとそんな感じなのかな。大げさかな?
ここで、釧路の街歩きはおしまいです。
ホテルに戻って朝食をとり、慌ただしく日本の東端を目指して出発しました。
根室からの帰り道、次の目的地の帯広への道中、ちょうど夕陽が傾く時間帯に、釧路を通りかかったので、有名な弊舞橋の夕陽を眺めてきました。
釧路の夕陽は「世界三大夕日」なんだそうです。旅から戻ってから知りました。
日没後の「マジックアワー」が特にオススメってことで、これ見逃したのはちょっと失敗だったかな!
そういえば、釧路は夏涼しいっていう話。
「涼しい釧路で長期滞在」っていうプロモーションも行われていました。
酷暑の本州の都会を離れて、1ヶ月くらい釧路で滞在して、仕事しながら観光するっていう働き方にあこがれます。ウィークリーマンション1ヶ月借りて12万円ちょっとでいけるみたい。
2020年の夏は東京でオリンピック開催されて、暑いわ混雑するわの地獄絵図が予想されるので、これまじめに検討してみようかなというレベルです。実現したら、「打合せは釧路でやろう!」って誰か来てくれるかな?
釧路の中心街は廃墟になっているというネタをネットで見て、ホントなのか確かめてみたいという意図もあった今回の釧路訪問でした。
中心市街地の商業は確かに壊滅的な印象を持ちました。しかし、釧路は歴史ある街で観光資源もあり、出張のニーズもあり、夏涼しいという気候的なメリットもある。かつての商業地に集合住宅が建って、住む人が戻ってきたとき、また新しい街が再生するというストーリーも描けなくもないかな、という感想を持ちました。
次はいつ書けるか不透明ですが、そのうち道東の旅の根室編でも書いてみようかと思っています。