私がチリ(いや、当時はまだ「地理」だな)に目覚めたのは、中学校2年の時です。
当時の地理の先生に、こう教えられたのです。
「教科書に書いてあること、先生が話すこと、すべてを地図を描いてノートに書き写すようにしなさい。」
それまで、地理って本に書いてあることを、地図と照らし合わせて理解して、暗記していけばいいもんだ、と思っていた私は、戸惑いながらもその作業を続けてみました。案外簡単そうですが、文字の情報量を減らさずに、地図の上に書き込むのは結構難しいものです。
逆に文字に書いていないことも理解しないと、地図の上には書き込めません。
この、「地図に書き込むために、理解しなければならない文字になっていない情報」というのが、まさに「チリ的思考」だと思います。
たとえば、「日本三景」を説明しなさい、という課題があったとします。
文字で表現するとこういうことになります。
日本三景(にほんさんけい)とは、宮城県の松島、京都府の天橋立、広島県の
厳島(宮島)の3つの名勝地のことである。
儒学者・林春斎が著書『日本国事跡考』に、「丹後天橋立、陸奥松島、安芸厳島、三処を奇観と為す」と書いたのが始まりと言われている。
(「ウィキペディア」より引用)
地図で表現すると、こうなります。
松島と天橋立と厳島が、日本のどこにあるか調べなければいけません。
文字で判っているのは、それぞれ宮城県、京都府、広島県にあるということだけです。
この3つの県ですら、どこにあるのかわからない、という人もいるでしょう。
「どこに?」というのがキーワードです。
この地図を見ながら、「ウチは名古屋にあるから、天橋立が一番近そうだ」と
発想することもできるでしょうし、この地図の上に新幹線路線図を書き込んだら、
「厳島は新幹線が通っているから、意外とこっちの方が早くいけるかも」という発想も生まれてきます。
「どこに?」を表現するためには、地図は必要不可欠で、「チリ的思考」の第一歩であることは間違いないでしょう。
事柄を地図の上に落としてみること。
つまり、「描写」です。
たぶん、この段階で「チリ的思考」の60%は終わっていると思います。
位置関係が理解できるので、先ほどの例でいえば「天橋立が一番行きやすそうだ」と考えられるわけです。
「チリ的思考」の残りの40%は、背後関係です。
先ほどの例でいえば、新幹線の路線を地図に書き込んだり、イメージすることで、「厳島も結構手軽にいけるかも」という発想が生まれます。
また、松島のある宮城県の名物は「牛タン」、天橋立の名物は「松葉ガニ」、
厳島のある広島県の名物は「カキ」という情報を地図に追加してみます。
肉が大好きで牛タンに目がない私は、多少時間と費用がかかっても、松島に
行こうと思うかもしれません。
仙台に行く途中に、東京の親戚の家に遊びに行ってみよう、という発想も
「東京という場所に親戚の家がある」という情報が地図の上で認識できるから
こそ生まれてくるものでしょう。
位置の情報を地図に書き込んだら、それ以外の関係ある情報も地図の上に書き込んで想像を膨らませてみる、というのが、「チリ的思考」の第2段階です。
どんな情報を書き込むのか、というのは、引き出しに入っている情報量と、その人の発想と経験値に左右されるでしょう。
「チリ的発想」が優れている人は、無意識にうまい情報を書き込んで、生活を豊かにしているに違いありません。
私が長年携わってきたロケーションビジネスの現場では、いろいろな情報を地図に書き込んでビジネスを成功させてきた事例を見てきました。
この経験を「楽しいチリビジ」のビジネスとして実現していきたいな、というのが私の野望です。