#4 緊急事態宣言で一番打撃を受けたのは、地方の「夜の街」?

#4から読む

9月上旬に行った「あさひる統計」のアップデートでは、2020年4月~6月のスマホの位置情報を集計しています。したがって、4月7日付けで発令された緊急事態宣言を受けた外出自粛の影響を色濃く反映したものとなっています。

緊急事態宣言下の外出自粛が、日本各地の人の動きにどんな影響を及ぼしたのか。あさひる統計の最新バージョンで振り返ってみようと思います。

前回は、東京およびその周辺の「夜の街」の人の流れが、緊急事態宣言によってどのように変化したのかを見てきました。

今回は、大阪をはじめとした各地方の「夜の街」の現象について、マップを見ながら振り返ってみます。

地方の「夜の街」はどう変化したか?

前回「夜の街」を次のように定義しました。

  • 平日3-6時の夜間人口より、平日12-15時の昼間人口が多い
  • かつ、平日12-15時の人口より、平日18時-21時の人口が多い
  • かつ、平日6-9時の人口より、平日18-21時の人口が多い

これらの条件にかかるメッシュに相当するエリアを「夜の街」と定義して、全国の主要な「夜の街」の「広さ」を地理的に定義してみました。

また、同時にこれらのエリアについて、時間帯別のピーク時とボトム時の人口を比較して、「夜の街」の「深さ」も定義しました。

この結果、「広さ」という点では難波/心斎橋、新宿、梅田がトップ3に、「深さ」という点では梅田、池袋がトップ3となりました。詳細については、前回の記事を参照して下さい。

さて、それでは各地の「夜の街」のマップを見てみましょう。まずは大阪キタです。

JRの大阪駅や北新地駅をはじめ、阪急、阪神、地下鉄などの梅田駅が集中するターミナルです。コロナ前の昨年4-6月期には、大阪駅前のオフィスビルを囲むように「夜の街」が広がっていたことが分かります。この梅田地区はコロナ前は「広さ」で全国3位、「深さ」で全国2位の「夜の街」だったエリアです。

コロナ後は、駅構内と北新地や堂山町のごく一部の限られたエリアにしか「夜の街」は存在していません。減少率は57.9%に達しています。

これに対して、もう一方の大阪の盛り場大阪ミナミを見てみましょう。

道頓堀から千日前地区まで広域に「夜の街」を形成しています。昨年のコロナ前の時期には「広さ」では全国1位の規模となっています。

コロナ後の状況を見てみましょう。「夜の街」は狭くはなっているものの、ほかの地区に比べれば現象は抑えられているようにも見えます。
人口減少率も55.9%で、都内の新宿や渋谷などに比べるとやや抑えられています。このミナミは周辺部に住宅地も目立っていて、東京の池袋と似たような立地であることも分かります。減少率がやや低い要因なのかもしれません。

次は、三大都市の一つ名古屋の栄地区の様子を見てみます。

栄の繁華街には錦三と女子大小路という二つの「夜の街」が別々にありますが、ここではこれらを統合して集計しました。全国的に規模がそんなに大きいわけではありませんが、広がり的にも深さ的にも「夜の街」は大きく減少している様子が分かります。減少率は55.8%となっています。

最後に、九州と北海道の盛り場を見てみましょう。

いずれも全国的に有名な「夜の街」です。奇しくもいずれも1/3程度に減らしています。人口減少率は65.7%と同じ数字になりました。かなり高率です。

これらの地域は出張や旅行者などが立ち寄る事も多いかと思われ、緊急事態宣言でこれらの広域からの流入人口が絶たれたことも、その大きな減少要因のようにも思われます。

両地域とも、緊急事態宣言下では夜が短くなったようで、すすきのなどは夜更かししすぎて住宅街と判定されてしまっていた場所が、繁華街と変化してしまっているのは皮肉です。

で、一番影響が甚大だった「夜の街」は?

ここまで各地の「夜の街」の傾向をマップを示しつつ見てきました。以下に表にまとめてみました。

全国で最もこの時間帯の人口が減少した「夜の街」は銀座/新橋となりました。前年同時期に比べると1/3を割るほどの人口減少です。ここは周辺が完全にビジネス街であり、テレワークでオフィスに出社する人が大幅に減ったことや、近隣から訪れる住民の存在がないことなどが要因ではないかと思われます。

次に減少幅が大きかったのは、すすきのと中洲という地方の有名な「夜の街」でした。出張や旅行などの移動が大きく制限されたこともあり、遠隔地からの人の流入がほぼなくなってしまったことも、要因の一つではないでしょうか。

以下、新宿、渋谷、上野とビジネス街的な要素と繁華街的な要素を持つ地域が続きます。難波(ミナミ)や池袋は繁華街的な要素が強い街ですが、比較的近い場所に住宅地が控えており、それらの需要を吸収しつつ減少率はやや緩和されたのではないでしょうか。

郊外に位置する船橋や赤羽は、住宅地に囲まれた「夜の街」ですから、緊急事態制限中も比較的気軽に訪れる人が存在したのではないでしょうか。

このように、「夜の街」といっても立地はさまざまであり、これらの要因によってコロナ禍の影響はやや異なっているということが分かりました。

次回は休日昼間の人出について考察してみたいと思います。

続き #6を読む

あさひる統計の詳細は、ホームページをご覧ください。

また、日本統計センターが公開しているウェブマッピングサイトである「47maps」では、あさひる統計をオンラインで閲覧することができます。身近な地域の人口の変化を、皆さん自身で確認することができます。

また、GISをお持ちでない方でも、商圏レポートをオンラインで作成できる
「未来商圏レポート」も提供しています。
将来の推計人口をベースに、将来の商圏を想定した商圏レポートが作成できます。最初の3枚は無料で出力できますので、興味のある方はご利用ください。