「あさひる統計」で振り返るコロナ禍での人流の変化

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2020.10.16
「あさひる統計」で振り返るコロナ禍での人流の変化

#3 緊急事態宣言で一番打撃を受けた「夜の街」はどこ?

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9月上旬に行った「あさひる統計」のアップデートでは、2020年4月~6月のスマホの位置情報を集計しています。したがって、4月7日付けで発令された緊急事態宣言を受けた外出自粛の影響を色濃く反映したものとなっています。

緊急事態宣言下の外出自粛が、日本各地の人の動きにどんな影響を及ぼしたのか。あさひる統計の最新バージョンで振り返ってみようと思います。

緊急事態宣言下では、不要不急の外出自粛が要請されました。前回の記事に示したとおり、テレワーク等の実施によって都心のオフィスへの通勤が減少しました。昼間に都心に滞留する人が少ない中、飲食店の営業時間が20時までに制限されたことも重なり、「一杯飲みに行こう!」という夜の街への人の流れが途絶えました。

今回はこの現象についてマップを見ながら振り返ってみます。

そもそも「夜の街」っていったいどこのこと?

緊急事態宣言下では、「夜の街」という言葉が世間で連発されていました。この言葉に関する積極的な定義を私は聞いたことがありません。

まずはじめに、地理に関わる立場から「夜の街」の場所を特定してみたいと思います。

「あさひる統計」では、時間帯ごとの人の動きによってその場所の特徴を定義する「地域区分コード」という概念を導入しています。

まず、昼間より夜間の方が人口の多い場所は「住宅街」です。通勤通学などで朝自宅を出て、オフィスや学校で昼間を過ごし、夕方以降に帰宅するような場所です。

残りの場所は、夜間より昼間の方が人口の増える場所です。この場所を3つに区分します。

まずは、平日の昼間に人口のピークが来る場所を「ビジネス街」と定義しました。オフィスや工場、学校などが立地する場所で、平日には午前中から午後にかけて人口が増え、夕方以降は減少する場所です。ここでは、平日に比べると休日の昼間の人口はそれほど増えません。

この逆に、休日の昼間に人口のピークが来る場所を「お買い物とレジャー」と名付けました。仕事休みの休日に出かける機会が多い繁華街やショッピングセンターが立ち並ぶ郊外の幹線道路沿いなどのエリアに加え、公園や観光地などで余暇を楽しむ場所もここに当てはまります。

そして、3つめの場所が昼間に比べて夕方の人口が増える「歓楽街」です。会社から自宅に戻る道すがら、食事やお酒などのエンタテイメントを楽しむような場所です。

以下のような条件式に見合うメッシュを対象としています。

  • 平日3-6時の夜間人口より、平日12-15時の昼間人口が多い
  • かつ、平日12-15時の人口より、平日18時-21時の人口が多い
  • かつ、平日6-9時の人口より、平日18-21時の人口が多い

帰宅途上に人が集う飲み屋街はもちろん、多数の人が通過する駅もこのカテゴリに含まれがちです。

コロナ禍の1年前(「ビフォーコロナ」と呼びます)の人流に基づいた「歓楽街」をマップで見てみましょう。

新宿、渋谷、池袋、上野、新橋などの主要ターミナルや郊外の主要駅の周辺に薄紫の歓楽街のエリアが存在します。このエリアを「夜の街」と定義します。

「夜の街」の広さと深さ

緊急事態宣言によって、各地で「夜の街」が消滅に近い状態にまで追い込まれていたことがマップで明らかになってきます。

昨年の4-6月期に地域区分コードで「繁華街」となった場所を「夜の街」と定義した上で、各地の変化を数字で追ってみましょう。

なお、この作業を行っている途中に気づいたんですが、あまりにも夜が深すぎる歓楽街は午前0時を回ってから人口がピークになる現象も見られます。そんな場所は、あさひる統計では「住宅街」と判定されてしまいます。新宿歌舞伎町、すすきの、中州、名古屋の錦三などにもそんな場所が散見できます。今回、こういう場所は私の知見で「みなし歓楽街」と扱いました。

「広さ」は連続するメッシュの数で、「深さ」はそれらの地域に滞在する人口で測ってみましょう。これらを数字で算出することで、各地の「夜の街」の規模感が計れます。そして、これらを1年前のビフォーコロナの状態と時系列的に比べることで、緊急事態宣言で受けた各地の影響の軽重を明らかにすることができます。

まずは、ビフォーコロナの世界の「夜の街」を可視化してみました。

時間帯別の人口のピーク時とボトム時を比較することで、各地への流入人口の量が分かります。流入が多ければ、それだけ深い「夜の街」ということができるでしょう。

一方、上表にて「メッシュ数(広さ)」という列は、地図上での範囲の広がりを数値的に示したものです。地図上で何マスのメッシュが該当するかという数値です。実際のエリアは、のちほど地図上で示します。

総合的にみて、やはり全国でトップの「夜の街」は新宿だと思われます。深さという点では梅田、池袋がトップ3、広さという点では難波/心斎橋、新宿、梅田がトップ3となりました。

池袋、難波/心斎橋、渋谷は流動人口のピークが休日の夕方に存在しており、単なる「夜の街」ではなく、同時にデパートや商店街などへの買物のニーズも受け止める総合的な街であることがわかります。

また、すすきのは休日の18-21時に人口ピークが現れており、観光客の存在が無視できないレベルにあることも想像できます。
中洲は人口ピークが21-24時の深夜帯におよんでいて、夜更かし傾向があることが分かります。

緊急事態宣言で各地の「夜の街」はどう変化したか?

では、各地の「夜の街」の変化をマップに示しつつ、解説していきます。

まずは、新宿から。

コロナ禍においては、薄紫のエリアが大きく縮小していることが分かります。コロナ以前の世界では夕方以降に人があふれていた場所でも、夕方以降の人出が減ってしまい、昼間の人口が上回るエリア(いわゆる「ビジネス街」)に変わってしまった場所が多くなっていることがわかります。

歌舞伎町の最深部では、以前は夜更かしが過ぎてしまい本来「夜の街」だった場所が「住宅街」扱いになってしまっていましたが、コロナ禍においては早く帰るようになり「夜の街」として認識されるようになりました。

この時期、歌舞伎町、新宿三丁目、西新宿を含む巨大な「夜の街」全体として、人口が1/3程度まで減っていたことが分かります。

次は渋谷です。

渋谷駅周辺から、道玄坂方面の神泉あたりまで「夜の街」は広がっていたことが分かります。広がり的にも深さ的にも新宿の半分程度の規模っていうのが以外に思われます。
コロナ禍においては、エリア的には駅周辺のごく一部になってしまったことが分かります。実際には駅にいる人や電車に乗車中の人も拾ってしまうため、想像以上に渋谷は「無人化」していたのだと想像できます。
ただし、減少率は新宿を若干下回っていることが分かります。まあ、誤差の範囲かもしれませんが。

次は上野です。アメ横あたりとか、飲んでいる人一杯いますよね。

上野の「夜の街」の領域は、広い駅構内を拾ってしまっていますので、少し解釈には配慮が必要かもしれません。駅の南側のアメ横や湯島のあたりに注目してみると、「夜の街」は浸食され、昼間の人出中心のビジネス街化していたことが分かります。

新宿、渋谷よりは、これも誤差の範囲っぽいですが、減少率は若干低くなっています。

そして、新橋と銀座地区をみてみましょう。一方は庶民的なサラリーマンの居酒屋が並び、一方は高級ラウンジが中心と性格が異なる「夜の街」ではありますが、地域的には隣接しているので一つの地区として扱いました。

新橋はもうちょっと「夜の街」は広がりがあるような気もしますが、ビジネス街的な要素も混在してる場所のため、昼の街として定義されてしまっているのかと思われます。その結果「夜の街」は駅周辺の狭い地域に限られてしまっています。ただ、狭いエリアに渋谷以上の人口を抱えていたという、とっても「深い夜の街」だったということが分かります。

コロナ後は銀座のごく一部で「夜の街」が残っているものの、新橋地区は鉄道敷地を除けばほぼビジネス街になってしまいました。そもそも、テレワークで通勤する人が半減している上に、午後8時で店が閉まってしまってはお手上げですよね。ここまで見てきた「夜の街」の中でも減少率は最大の値を示しています。

次は池袋。池袋のマップを見ると、駅からそう離れていない場所に住宅街が広がっており、新宿や渋谷、新橋などとは少し趣を異にするエリアであることが分かります。

駅を中心に、東西に「夜の街」は広がっていて、渋谷を上回る人口集積があったことがわかります。コロナ後の「夜の街」は、ほぼ駅とその隣接地に限られてしまい、ほぼ消失しています。オフィス街化したり、駅ビルなどに相対的に休日のお出かけが増えた傾向が見られます。

ただ、人口の減少は50%台であり、新宿や渋谷、新橋に比べると若干は緩和されていることがわかります。

次は郊外の「夜の街」の様子を見てみましょう。
まずは東京の北にある盛り場、赤羽の様子を見てみます。

駅の東口の南北方向に「夜の街」が認められます。都心の「夜の街」に比べて、周囲は緑の住宅街が多いことが特徴です。
郊外だけに規模は小さめですが、集客はそれなりにあって夜は賑わっていました。コロナ後も「夜の街」の領域の縮小は少なくなっていて、人口の減少幅も40%台にとどまっています。

もう一ヶ所、千葉県の船橋の様子を見てみましょう。
今日飲みに行く予定だったので、つい調べてみちゃいました。

いかがでしょうか。
こちらも領域的には大きな変動はないように見えます。人口減少率も50%台の前半となっていて、都心部よりは減少幅は少なめのようです。

住宅街が近くにあるということは、家の近くで飲めるっていうことです。通勤がなくなり、都心へ出ることがなくなった時期に、歩いて飲みに行ける郊外の「夜の街」に人が集う傾向があったのかもしれません。

さて、ここから地方の盛り場の様子をまとめてからまとめていこうと思ったのですが、やや長くなってきたので、今日はここまで。

続き #5を読む

あさひる統計の詳細は、ホームページをご覧ください。

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